日本睡眠科学研究所がまとめた「睡眠白書」。
最新の2019年版の白書では、子育て中の母親を対象に睡眠や子育ての状況について実態調査を行っています。
今回は、20代・30代の働き盛り世代・子育て世代の睡眠状況を掘り下げてみたいと思います。
「ママが眠れない」事情には、何があるのでしょうか。

ママたちの社会階層とは

調査は、未就学児(乳児・幼児)の母親と、就学児(小学生~高校生)の母親の2カテゴリーで行われました。結果、「子育て中のママ」というひとくくりでは計れない、興味深い違いが浮き彫りになっています。

未就学児の母親は60%が専業主婦

「未就学児の母親」とは、具体的にどういう層でしょうか。

未就学児の母親は60%が専業主婦

年代は30代が最も多く、自身の職業について聞いた質問では、60%が「専業主婦」と回答しています。
総務省の「就業構造基本調査」によると、夫婦共働き世帯の割合は48.8%。逆算すると約51%が専業主婦ということになります。
両者の間には10%近い差があり、乳幼児の世話をするために、多くの女性が仕事を離れて家庭に入り、子育ての主な担い手になったことを伺わせます。

就学児の母親は6割近くが「働くママ」

一方、「就学児の母親」をみると、年代のボリュームゾーンは40代でした。

就学児の母親は6割近くが「働くママ」

職業では、パートが23.4%、会社勤務(一般社員)が13.6%など、就業している人の割合が55%を越え、専業主婦は44.2%にとどまっています。
子どもが手離れして職場復帰する人、経済的な事情から就業する人など、就学児の母親では子育てをしながら働く人が増加していることがわかります。

ママたちの睡眠実態を検証してみた

半数以上のママが睡眠不足に悩んでいる

白書では、続いて、母親たちの睡眠が十分に取れているかを質問しています。

半数以上のママが睡眠不足に悩んでいる

未就学児の母親では、は「あまりとれていない」「全くとれていない」と回答した人は全体の約60%を占めています。
一方、小学生以上の就学児の母親でみると「あまりとれていない」「全くとれていない」と回答した人は約52%。
子どもが成長して育児の負担が減るにつれて、睡眠不足を自覚する人の割合が低下していることがわかりました。
それでも半数以上の母親は、睡眠を十分にとれていないと感じており、子育てが睡眠に及ぼす悪影響を類推させる結果になっています。

ママたちが睡眠不足に陥る主原因は?

睡眠が十分にとれていないと回答した人に対して、その原因を聞いたところ、未就学児の母親では「主に家での家事・子育てが原因」と回答した人が62.0%と大勢を占めました。

睡眠不足の主要因は「家での家事・子育て」

これに対して、就学児の母親は、「主に家での家事・子育てが原因」が46.7%、「仕事・家での家事・子育て両方が原因」が44.0%と拮抗しています。
一方で「主に仕事だけが原因」と回答した人は10%弱にとどまっており、仕事・家事・子育ての複合要因が睡眠不足に影響していることがわかりました。

未就学児ママたちは「子どもの夜泣きと寝相」で睡眠不足に

白書は、睡眠不足のより具体的な原因についても調査しています。

未就学児ママたちは「子どもの夜泣きと寝相」で睡眠不足に

未就学児の母親が眠れない一番の理由は「家族の食事(朝・昼・夜)の準備のため」でした。
これは一般的な家事負担の一部と考えて差し支えなさそうですが、続く2位・3位は「子どもが夜中に起きるため」「子どもの寝相が悪いため」となっており、母親の睡眠時間が子供の眠りに強く左右されていることがわかります。
何度も起きてしまう子どもを、そのたびに寝かしつけるのは大変ですよね。
布団の中で動き回る子どもを定位置に戻すのも、相当なストレスでしょう。子どもに蹴られて起きてしまう、といったことも考えられます。
ママの苦労は、昔も今も変わらないといえそうです。

家事負担で睡眠時間が取れない就学児ママ

「就学児の母親」の調査でも、一番の睡眠阻害要因は、「家族の食事の準備のため」という結果が出ています。

家事負担で睡眠時間が取れない就学児ママ

しかし、就学児ともなると、寝かしつけや寝相に気をとられて眠れないことはなくなっているようで。
代わって、眠れない理由に挙げられているのが「洗濯・掃除に時間を取られるため」「その他家事が終わらないため」です。
これらの家事負担は、子どもの成長に応じて高まっていくと考えられますから、ある意味当然ともいえるでしょう。
「家事に追われて眠れない」ことが、就学児の母親にとっての問題点といえそうです。

よく眠るためにするべきこと

睡眠のために生活サイクルを子どもに合わせる

眠れない嘆きの声が目立つ子育て世代の母親たち。
しかし、その中でも「睡眠は十分に取れている」と回答した人たちがいます。
白書は、これらの母親たちに対して「日常的に気をつけていること・行っていること」を聞いています。

睡眠を十分にとるために、未就学児の母親が日常的に気をつけていること・行っていること

1 位(61.8%)…子供を早く寝かせる
2 位(47.1%)…子供の時間に合わせて一緒に寝る
3 位(35.3%)…睡眠時間を削らないように生活している
4 位(20.6%)…子供と敷き寝具(敷き布団やマットレス)を別にしている
5 位(14.7%)…家族の他の人に家事などを頼んでいる
5 位(14.7%)…カフェインを取らない

小さい子どもから目が離せないので、自分で何かを励行するというよりは、子供優先の生活スタイルをとって対応しているようです。
また、子供の寝相が睡眠不足の理由の上位でしたが、睡眠が取れているとした人は、子供と敷き寝具を別にするという対策をとっていることがわかりました。

良質な睡眠はリラックス時間の確保がポイント

一方、就学児の母親たちはどうでしょうか。

睡眠を十分にとるために、就学児の母親が日常的に気をつけていること・行っていること

1位(36.8%)…子供を早く寝かせる
2位(25.0%)…子供と寝室を別にしている
3位(23.5%)…睡眠時間を削らないように生活している
4位(22.1%)…ストレッチをする
5位(17.6%)…お風呂にゆっくり入る

つきっきりの育児から手離れしたことで、自分から睡眠を改善する生活習慣を取り入れようとする、能動的なアクションがみられます。
キーワードは「リラックス」。ストレッチや入浴など、疲れを癒して気分を変える工夫を、約20%の人が行っていることがわかりました。

以上、子育て中の母親の睡眠実態を調べた白書の内容を紹介してきました。
眠れない状態は、未就学児・就学児の母親に、それぞれの事情があって生まれること、また不眠を改善するためにどんなことをしているか、いろいろなことがわかりました。
とはいえ、冒頭に示したように、マの半数以上は睡眠不足に苦しんでいる現状があるのはたしかです。
2人以上の子どもがいて、就学児と未就学児にまたがっている場合などは、さらに問題が深くなりそうなケースも当然あるでしょう。
残念ながら、眠れないママたちの悩みは、なかなか簡単には解決できそうにないようです。

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